欧州も同じように考え、統一通貨ヨロ」を一九九九年から導入した。
ユロの誕生で世界の貿易取引で使われる通貨のシェアは、ドルが五〇%弱、ユロが三五%弱となるのに対し、円はたったの五%。
このままでは世界の通貨はドルとユロの二極体制となり、円建ての世界貿易が増えるどころか、円は単なるロカル通貨に成り下がる懸念がある。
そこで、まずは日本との貿易取引が多く、日本からの投資資金も巨額に達しているアジアで円の利用を促進し、これを手掛かりに円の国際化を進めるべきだとの指摘がなされている。
不幸中の幸いというべきか、現在アジア諸国はドルへの依存を強めすぎたことが通貨危機につながったとして、利用通貨の多様化を模索しているところだ。
円とアジア通貨の為替安定化など、解決しなければならない問題は多いが、二十一世紀に日本が為替相場に一喜一憂しないためにも、円の国際化推進は大きな課題である。
ところで、前項でも触れたように、国内だけでなく、最近は外国から出る注文も、輸出抑制より日本の市場開放を急ぐべきだというものが目立つ。
為替が円高傾向を強めるのは貿易黒字が減らないからであり、黒字を減らすには内需拡大による輸入増大が大切だが、日本市場は系列取引や独特の商慣行がはびこっていて、外国企業にとって入りにくいというわけだ。
また、日本人にとっても、こうした非関税障壁は、安い輸入品を享受できるチャンスを奪い、豊かさを実感できない大きな原因となっているとの主張がある。
内外価格差の問題はその一つで、実際の為替レートとの違和感がたびたび指摘されている。
よく知られる比較方法として、日米のハンバーガー一個の価格を比べた「ハンバーガー平価」がある。
形も味もそれほど違わないハンバーガーだから、直接比べてもいいというわけだが、九一年当時、東京とニュョクでは一二七円と一ドル四〇セントだった。
これから一ドル=一五五円というレートが計算される。
当時の実際のレートは一三四円程度だったから、二〇円以上の割高相場になっていたわけである。
経済企画庁が毎年実施している内外価格差の調査では、日米のハンバーガーだけでなく、日本の東京を含む先進国の首都での主だった商品価格について調べ、購買力平価を計算している。
九八年の日米を例にとると、生計費全体の購買力平価は一ドル=一四一円だったのに対し、実際の年間平均レートは一三〇円九〇銭だった。
すなわち、日本の物価水準は一ドル当たり一〇円、七・六%ほど割高だったことになる。
それでも九三年は、購買力平価の一ドル=一八〇円に対し年間平均レートは一〇七円だったから、五年間でその差は随分縮小した。
規制緩和が進み、国内の非関税障壁が低くなったわけだ。
流通改革などがさらに進み、海外製品が円高をストレートに反映してますます安く国内で売られるようになれば、国民の購買意欲も向上し、内需拡大につながるだろう。
一九八〇年代までは「米国がくしゃみをすれば日本は肺炎になる」という比噛がよく使われた。
これは「米国がくしゃみをすれば、ヨーロッパは風邪を引く」という諺があったのをもじって、ヨーロッパが風邪を引くくらいなら、もっと対米依存度の強い日本は肺炎になるという意味である。
バブル景気の絶頂期には、大金を持った日本の企業が、不況で元気のない米国の建物や土地を買い漁り、「日本と米国は対等のパートナだ」と胸を張った時もあった。
しかし、バブル崩壊後は、好況を認歌する米国と長期不況に苦しむ日本と、立場は再逆転。
米国の景気が日本の景気に大きな影響を及ぼす状況が、現在でも続いている。
世界のどの国でも、景気を考える場合、国内要因と海外要因に分けて検討するが、その海外要因でまず第一にあげるのが米国の動向である。
米国の通貨「ドル」は世界の基軸通貨。
ドルに対する自国通貨の為替レートが上がるか下がるかで、国内景気が大きな影響を受けるのは前項で見た通りだ。
通貨だけではない。
米国はGDP世界第一位の大国で、消費大国でもあり、海外投資大国でもある。
ソビエト連邦が崩壊した後は、「世界の警察」であり、唯一のスーパーパワだ。
世界中からモノを買ってくれるし、投資もしてくれる。
米国の景気がよければ世界中の国の輸出が増え、投資も増える。
だが、米国で保護主義が台頭すると、世界各国ともそのあおりを受けて停滞するといった具合である。
対米輸出依存度の高い国ほど大きな影響を受ける。
南米諸国や東南アジアなどはその典型だろう。
もちろん日本も例外ではない。
日本の経済力が高まったので、米国の影響を受けることが少なくなったのではないか、と考える人がいるかもしれないが、とんでもないこと。
この辺の事情を知るために歴史的に振り返ってみよう。
戦後の世界経済は、各国間の相互依存関係を深めることによって発展してきたといえる。
第二次世界大戦が終結した直後には、米国経済は世界経済を支配していた。
豊富な天然資源と膨大な資本力を背景に、国土が戦争被害を免れた米国経済の力は、まさにダントツ。
敗戦の結果、壊滅に瀕した日本やドイツはいうまでもなく、「戦勝国」であったイギリスやフランスも、直接・間接の戦争被害によって生産力は低下し、生活必需品の供給も思うにまかせず、それを輸入するための外資も乏しい有り様だった。
戦後五年を経た一九五〇年においても、米国の国民総生産は世界全体の実に三四%、つまり三分の一以上を占めていたし、輸出額は世界の二一%。
金・外貨の保有額に至っては、世界の半分以上が米国に集中していた。
まさに米国がくしゃみをすれば全世界が肺炎になる、といってもいい状況であった。
しかし、一国だけが強くても世界全体は繁栄しない。
この時、米国がとった政策は、自由・無差別貿易の拡大をテコに、世界経済の復興と成長を志向することだった。
ドルを世界中に大量にばらまいて、英ポンドに代わってドルの基軸通貨としての地位を確立し、将来のパックス・アメリカナにつなげたいという狙いもあったかもしれない。
米国は絶対的な経済力を背景として、国内では完全一雇用の維持と経済成長に努めるとともに、国際的には、MF(国際通貨基金)、世界銀行、ガット(関税と貿易の一般協定)を中心とする「ブレートン・ウッズ体制」を作った。
現在では、暫定的な国際協定に基づくだけだったガットは、正式な国際機関としてのWTO(世界貿易機関)に発展解消。
貿易に関する国際裁判所に近い存在として、時には米国の独走を牽制する存在になった。
MF・世銀体制の方も、新興工業国の台頭などで「米国寄りの限界」が指摘されるようになっている。
しかし、ブレートン・ウッズ体制によって二十数年間の長きにわたり、世界は未曾有の繁栄を躯歌することができたのも事実である。
数量ベースで一九六〇年代が八・五%の急成長を遂げた後、一九七〇年代が四・五%、八〇年代に入って三・五%と次第に鈍化してはいる。
それでも、一九九〇年には世界貿易は金額ベースで三兆ドルの大台に乗せた。
MFのまとめでは、九八年の世界貿易(商品のみ)は九〇年代で最も停滞して、金額(名目輸出)ベースで前年より一・八%の減少となったが、五兆四三八〇億ドルと五兆ドル台を維持している。
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